
本記事のポイント
- 1サムスンはインド事業30周年に合わせ学生イノベーション支援を第5回まで拡張した
- 2AI・IoT活用の社会課題解決型技術を評価対象とした産学連携モデルが鮮明になっている
- 3R&D基盤と人材育成を組み合わせた長期投資モデルは日本企業の参考になりうる
この記事の概要
IITデリーに、サムスン「Solve for Tomorrow 2025」の受賞者たちが集結した。インドで第5回を迎えた同プログラムは、65カ国で展開するサムスンのグローバル青少年イノベーション事業である。単なるアイデアコンテストの枠を超え、同社のR&Dセンター・特許取得支援・産業専門家によるメンタリングを組み合わせた技術実証の場として機能している。
サムスンのインド事業30周年と重なるこの節目は、長年構築してきた研究開発基盤を次世代の技術人材育成に直結させようとする戦略的な取り組みとして注目される。 受賞作の顔ぶれはいずれも社会課題に根ざす。カルナータカ州出身のトゥシャール・ショウが開発した「Percevia AI」は、視覚障がい者向けのスマートグラス型ウェアラブルデバイスだ。
3×3の空間グリッドとリアルタイム物体検出、5言語対応のローカルLLMを組み合わせ、周囲の状況を触覚振動と音声案内に変換して自律歩行を支援する。「AIでより安全・スマート・包摂的なインド」部門の最優秀賞を獲得した。 ハリヤーナー州のプラネット・ケタンが手がけた「Paraspeak」は、脳卒中・脳性麻痺・パーキンソン病などに起因する構音障害を明瞭な音声へ変換する低コストIoTデバイスだ。
ヒンディー語の構音障害音声データベースとしては初かつ最大規模のものを独自に構築しており、コンピューター上のテストでは96.7%の認識精度を達成している。実環境では症状の重さに応じて80〜95%の精度で動作し、遅延は2〜3秒にとどまる。「インドにおける健康・衛生・ウェルビーイングの未来」部門を制した。
パンジャーブ州出身のアビシェーク・ダンダとプラブキラット・シンは、自社「Prithvi Rakshak」のもとで自動ミミズコンポスト化システム「VermiKendra」を開発した。IoTセンサーでpH値・温度・水分量をリアルタイム監視し、専用モバイルアプリで農家の有機肥料生産を最適化する仕組みである。「テクノロジーによる環境・持続可能性」部門の最優秀賞を受賞し、すでに地域農家の堆肥化プロセス改善に活用されている。
サムスンがインド市場でR&D基盤と学生育成投資を組み合わせたエコシステム形成に本格的に取り組んでいる点は、インドでの長期的な人材確保・技術開発を検討する日本企業にとっても見落とせない動向である。
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