
本記事のポイント
- 1電気法の緊急条項発動により、ヴェーダンタやタタ・スチールなど大手企業の自家発電112基が10月から3カ月間フル稼働を義務付けられた。
- 29月10日の電力需要が月間過去最高の269ギガワットに達し、夏季ピークに匹敵する異例の需要急増が発動の背景にある。
- 3タタ・パワーの輸入炭火力発電所コースタル・グジャラート・パワーも同措置が12月末まで延長され、燃料コスト問題を抱えつつ稼働継続となる。
ニュースの背景
インドでは例年、電力需要は夏季にピークを迎えるが、今年は9月に入っても需要が高止まりし、9月10日には月間として過去最高の269ギガワットを記録した。これは5月の年間最高値270ギガワットに迫る水準である。電気法第11条は非常事態において政府が発電事業者に稼働を指示できる規定で、過去にも発動例がある。今回、自家消費用の石炭火力自家発電設備にも稼働命令が及んだ。
日本企業への影響
対象企業はヴェーダンタ、タタ・スチール、JSWスチールなど、アルミ精錬・製鉄・セメント・製油を担うインド地場の重工業大手が中心であり、これらの企業と取引や合弁関係を持つ日本企業は電力供給・生産計画への影響を確認する必要がある。またタタ・パワーの発電所稼働延長は、電力需給や燃料調達コストの動向として、インドで工場を運営する日系製造業にも間接的に関係し得る。
この記事の概要
インド中央政府は電力需要の急増を受け、電気法第11条に基づく緊急措置を発動し、石炭火力の自家発電設備(キャプティブ発電所)約112基に対し、10月1日から12月31日まで最大出力での稼働を義務付けた。対象は発電容量50メガワット以上の石炭火力自家発電設備で、対象企業にはヴェーダンタ、タタ・スチール、ヒンダルコ・インダストリーズ、JSWスチール、ウルトラテック・セメント、リライアンス・インダストリーズ、インディアン・オイル、バーラト・アルミニウム、ヒンドゥスタン・ジンク、ナヤラ・エナジーなどが含まれる。9月10日には月間として過去最高となる269ギガワットの電力需要を記録し、これは今年5月の夏季ピーク時に記録した270ギガワットに迫る水準だった。
政府は各発電設備に対し、自家消費分を除く余剰電力を電力取引所を通じて売却するよう求めるとともに、発電量・自家消費量・売電量・石炭在庫を中央電力庁へ週次で報告するよう義務付けた。あわせてタタ・パワーが運営する輸入炭火力発電所、コースタル・グジャラート・パワー(グジャラート州ムンドラ)についても、同様の緊急措置を12月31日まで延長した。同発電所は燃料費の高騰と長期売電契約の不在により約6カ月間ほぼ稼働を停止していたが、今年に入りグジャラート州政府が改定後の売電契約を承認したことで供給再開の道が開かれ、3月以降は同措置の下で稼働を続けていた。
詳しくは参考記事をご確認ください。
キーワード解説
キャプティブ発電所(Captive Power Plant)
企業や工場群が自社の電力需要を賄うために自ら建設・運営する発電設備で、公共電力網への売電を主目的としない施設のこと。
電気法第11条(Section 11 of the Electricity Act)
非常事態において政府が発電事業者に対し、指示に従って発電所を稼働させるよう命じることを認めるインドの法律条項。
中央電力庁(Central Electricity Authority)
インドの発電・送電に関する統計や運用状況を監督し、発電事業者からの報告を受ける政府機関。
※用語解説は記事の理解を補助するための一般的な説明であり、法務・税務・投資その他の専門的助言を目的とするものではありません。


