
本記事のポイント
- 1EV・蓄電池・モーター関連の日系メーカーは、IRELが主導するインドのレアアース調達多元化の動向を注視し、現地調達戦略の見直しを進めるべきだ。
- 2IRELがサンプル分析から実調達へ移行する前段階で、永久磁石・蛍光体分野の精製技術を持つ日系素材メーカーがIRELや合弁候補と早期にMOUを締結しておくことで、調達スキーム設計への関与と優先交渉権を確保できる。
- 3サンプル分析完了後2〜3年以内とみられるインドの精製設備整備フェーズを狙い、日本の精製装置・技術ライセンス保有企業が技術供与や設備供給で参入できる時間軸は十分に現実的であり、今から政府間チャネルを通じた打診を始める余地がある。
この記事の概要
インドが重要鉱物の調達先を中国以外に分散させる戦略の一環として、ロシアのシベリアに位置するトムトール鉱床からレアアースのサンプル取得に向けた交渉を進めていることが明らかになった。 インドの国営鉱業会社IREL(India Rare Earths Limited)が、ロシア国営石油会社ロスネフチと交渉の窓口となっている。まずはトムトール鉱床のサンプルを入手し、含有する鉱物の組成を詳細に分析した上で、本格的な調達や協力関係の構築を検討するという段階的なアプローチを採用している。
トムトール鉱床はシベリア奥地に位置し、世界有数の希土類資源埋蔵量を持つとされる。インドがこの鉱床に着目した背景には、世界のレアアース精製・加工の大部分を握る中国への過度な依存から脱却したいという戦略的な動機がある。レアアースはEV(電気自動車)用モーターや風力発電機、各種電子部品など、クリーンエネルギー分野に不可欠な素材であり、インド国内での需要は急速に拡大している。
インドは現在、EVの普及と再生可能エネルギーの大規模導入を国家政策として推進しており、これらに必要なレアアースの安定調達は産業政策上の優先課題だ。中国は採掘から精製に至るサプライチェーン全体を抑えており、地政学的な緊張が高まる中でインドは代替調達先の確保を急いでいる。今回のロスネフチとの接触は、カナダやオーストラリア、アフリカ諸国といった複数の選択肢を模索するインドの多角的な資源外交の一手とみることができる。
ただし、ロシアとの資源協力は対ロ制裁をめぐる地政学的リスクも内包しており、サンプル分析から実際の調達契約に至るまでには相当の時間と外交的調整が必要とみられる。
詳しくは参考記事をご確認ください。


